これからの時代は?
個人輸入
ネットを見ると、今や個人輸入のサイトが花盛りです。世界中に、これだけピルがある訳ですから、日本で手に入らないピルを海外留学などの際に手に入れて日本に持ち帰ったり、自分も個人輸入してみようと考える女性が出ても何ら不思議ではありません。実際、当院の外来でも個人輸入でピルを入手している女性が少なからずありました。その真贋(しんがん・本物かにせものか?)は不明ですが、海外からお薬を取り寄せて医師の責任のもと、患者さんに処方している医療機関も徐々に増えてきました。日本では、緊急時や日本で手に入らないお薬の輸入は認められているので、個人輸入=すべて悪というわけではありません。
新しいルール
当然のことながら、医師は自分が処方したお薬には責任を持ちますが、自分が処方していないお薬に責任はありません。ボランティアのメール相談でも、個人輸入=自己責任ですから、原則としてコメントは控えるようにしています。個人輸入で、お薬は手に入りますが、相談に乗ってくれる医師は手に入りません。医師にとっては、リスクを負うだけで何のメリットもないからです。2018年7月から、低用量ピルの安定供給を図るために、初めてお薬の緊急輸入に踏み切りましたが、海外から届いたお薬の説明書には、色々なトラブルが起きた場合に、tell
your doctor, ask your doctor
と記載されており、海外でも医師・薬剤師の管理のもとに薬を使用することが大前提となってお薬が流通していることを再認識しました。患者さんから見れば、海外で広く使われているお薬を自分も使ってみたいと思うのは当然ですが、何かあった時にどうするか?誰が責任をとるか?には、新しいルールが必要です。
結論として、当院で輸入し院長が処方したお薬には、院長が責任を持ちます。お気づきの点や、相談したいことがあれば遠慮なく電子メールをお送りください。
問題点
今までお薬は、100%日本の製薬会社→薬問屋→医療機関という流れでしたが、貿易会社を介して海外から直接お薬が入ってくることになります。日本の製薬会社・薬問屋から見ると売り上げが落ちる可能性があり、厚生労働省から見ると臨床試験や薬の承認過程をブッとばして薬が日本に入ってくることになります。ただし、すでにお薬の多くが海外製なので、薬問屋さんに薬代を支払っても、貿易会社に薬代を支払ってもお金が海外の製薬会社に流れるのは同じです。海外の製薬会社から見ると日本での臨床試験や薬の承認過程をすり抜けてお薬が販売できるので、時間とコストの節約につながりますし、お薬を必要とする患者さんにとっても日本で手に入らない海外の薬を使えるメリットは少なくありません。個人輸入の解禁そのものが、海外の巨大製薬企業のグローバル戦略にのせられたとも言えますが、これが嫌なら個人輸入を禁止すべきです。ただし、あともどりはおそらく無理でしょう・・・。お薬の安定供給は、日本国民の命にかかわる問題だからです。おりしも、日本とEUはEPA協定(経済連携協定)を結びましたし、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)もアメリカ抜きで批准されました。発想を変えて、メガファーマに挑戦する日本企業も登場しています。iPS細胞など再生医療や創薬で、日本発の画期的なお薬が世界中に広がるのも夢物語ではないかもしれません。