人工妊娠中絶について

日本では母体保護法という法律で人工妊娠中絶が認められており、産むか産まないかは母親になる女性に最終的な決定権があります。ただし、中絶は倫理的に悪であり、医学的には母体に有害である事を認識して下さい。
中絶方法は、以下の2つが可能です。

  1. 手術(子宮の中の胎児とその付属組織を取り出す)
  2. 経口薬(メフィーゴパック)

日本では、2023年に経口中絶薬が厚労省から認可され、2024年6月から当院でも導入することにしました。

  1. 中絶手術のスケジュール
  2. 経口中絶薬のスケジュール

中絶手術

手術前日

夕食は軽めにとり、早めに就寝して下さい。(不安で眠れない方には、睡眠剤を寝る前に処方致します。)リラックスして、手術当日を迎えることが大切です。

手術当日

起床した後は、食べたり飲んだりせず午前9~10時頃までにご来院下さい。(食事をすると、手術の時の麻酔の影響で食物を吐いてしまい、気管に詰まって窒息する事があります)

前処置

入院診察の際、膣を消毒して子宮の入口を拡げる器具を挿入する場合があります。手術衣に着替えていただいてから、個室で点滴を始めます。手術の30~60分前に肩に麻酔の準備の注射をします。

手術方法

正午過ぎに手術室に入室します。呼吸のモニター装置・血圧計などをつけ、全身状態を確認した後に、点滴から麻酔薬を注射します。麻酔がかかると、手術中に意識はなくなります。手術はおよそ10~15分でおわります。手術後に、超音波検査で、胎児組織の残りがないことや子宮の収縮の具合をチェックします。
麻酔がさめ、意識が戻り、全身状態に異常のないことを確認したのちに個室に戻り、2~3時間安静にします。

退院

経過が順調なら、お昼過ぎまでに退院可。

手術料

9万9千円(内税)

2024年2月から値下げ

経口中絶薬

月曜・水曜・土曜の朝~夕方に1剤目内服

医療機関を受診して、1剤目(ミフェプリストン)を飲みます。内服したら、そのまま帰宅できます。飲水や食事の制限はありません。慎重に経過を見て行きますが、何かあればLINE・メール・お電話などでお知らせください。

月曜・水曜・金曜の朝に2剤目内服

2日後・医療機関を午前中に受診して、2剤目(ミソプロストール) を飲みます。内服したら、そのまま入院します。徐々にお腹が痛くなって出血が始まり、胎嚢(たいのう)が排出されます。夕方までに胎嚢が完全に排出されれば成功です。胎児組織の遺残など不全流産でないことを確認します。胎嚢排出後も、数時間から数日間、出血や痛みが続きます。慎重に経過を見て行きますが、何かあればLINE・メール・お電話などでお知らせください。

退院

経過が順調なら、夕方までに退院。

胎嚢が排出されない場合

製薬会社のデータでは、10%前後の女性で中絶に失敗して手術が必要になります。人工的に稽留流産または不全流産を起こしたのと同じです。
その場合は、手術を受け退院となります。

薬による中絶料金

15万円(内税)

薬による中絶に失敗し手術が必要になっても追加料金は発生しません。

その他の注意事項

手術と経口の比較

中絶手術(吸引法)と経口中絶薬を比較してみました

  吸引法(2013年から導入) 経口中絶薬(2024年から導入)
妊娠週数 妊娠10週くらいまで 1剤目が妊娠9週0日まで
全身麻酔 必要 不要(失敗時は必要)
子宮内操作 必要 不要(失敗時は必要)
痛み 手術中の麻酔が効けば無し あり(1割程度のケースでかなりの痛み)
出血 妊娠週数が進むとかなりあり あり(止まらなくなる場合もある)

手術室・病室の写真

電動式手術台(アトム)

電動式手術台(アトム)

手術用ライト(LED無影灯)

手術用ライト(LED無影灯)

病室写真

病室写真2

入院は個室でおこなっています。内線電話を配置し手術当日は同伴者の付き添いも可能です。

病室写真

病室写真1

トイレ・洗面室は病室に付属しています。

避妊について

望まない妊娠を二度と繰り返すことのないように、次回からは避妊についてしっかりと考えておくことが必要です。避妊の方法については、次のページを参考にしてください。

どうしても中絶できないとき

妊娠21週6日までの中絶は法律で認められています。ただし、色々な事情からどうしても中絶できないときは分娩するという選択もあります。この場合、新生児を子供のないご夫婦などに親権などを一切放棄して養子に出すことも可能です。最寄の児童相談所や家庭裁判所などが対応してくれますから、一人で悩まずに相談されることをお勧めします。恵まれない新生児を国内外の里親に紹介してくれるNPOも活動しています。

中絶手術Q&A

Q1:中絶手術の同意書に相手の男性の同意書は絶対に必要でしょうか?

A:性的暴力により無理やり妊娠してしまった場合や、夫が妊娠成立後に蒸発して行方不明になってしまった場合など、女性の同意だけでも手術が受けられる場合があります。

Q2:女子高校生では親の同意書が必要ですか?

A:その通りです。自分の親だけでなく、相手の男性が未成年の場合は、相手の男性の親の同意書も必要になります。

Q3:女性が中絶を希望しているのに、相手の男性が同意しない場合はどうしたらよいでしょうか?

A:双方が納得いくまで十分に話し合うことが必要ですが、最終的な決定権は女性にあります。これは手術を受けるのが女性であって、男性ではないからです。

Q4:中絶手術のリスクを教えてください(気の弱い女性は、読まないでください)

A:中絶手術の麻酔は静脈性全身麻酔で行なう事が多く、血圧が低下したり呼吸が一時的に止まるなどのトラブルがある程度避けられません。手術は、器具を子宮内で盲目的に操作するために、子宮の壁に穴を開けることが非常にまれにありえます(穿孔)。また、子宮内に胎児の組織を取り残して、手術後に出血がだらだらと持続することがまれにあります(遺残)。この場合は、最初の手術から約1週間後にもう一度手術をやり直すことがあります。手術後に、子宮内についた細かな傷からばい菌が感染して子宮に炎症を起こすことがまれにあります。中絶手術が、いかに女性にとって大変な事か、男性の方に少しでも理解していただければと思います。

Q5:中絶手術後の注意点を教えてください

A:手術当日は無理をせず、出来るだけ安静にすることが必要です。ただし、翌日からは、ベッドに寝ている必要はありません。できるだけ普通に生活して、子宮が早く元の大きさに戻るよううながします。手術後出血は1週間~10日前後続きます。出血が多い間は、子宮口が開いた状態ですから、シャワーのみで浴槽につかって入浴することができません。1週間後の診察で、特に問題なければ、浴槽につかって入浴ができるようになります。

Q5:中絶手術後のセックスは、いつから再開できますか?

A:手術後約2週間して、出血が完全に止まればOKです。ただし、避妊をおろそかにすると生理が再開する前に連続妊娠して、再び中絶手術を受けるはめになるケースがあります(^^;)。当院では、出来れば次の自然な生理が来るまでは禁欲することをお勧めしています。

Q6:中絶手術後の生理はいつから始まりますか?

A:手術後1ヶ月~1ヶ月半くらいで生理が来ます。万一2ヶ月たっても生理が再開しない場合は、医療機関を受診して診察を受けてください。

Q7:中絶手術を受けると、子供が出来ない体になるというのは?

A:これはほとんどデマです(^^;)・・・。むしろ逆で、一度妊娠すると、次から妊娠しやすい体になると言って良いでしょう。避妊をしっかりしないと、次々と妊娠し、何度も中絶を繰り返すことになります。

Q8:中絶手術を繰り返すとどうなりますか?

A:分娩経験のない女性(初産婦)では、中絶手術を繰り返すと、いざお産という時に早産したり、分娩時の出血が増えたりする傾向が指摘されています。医学的には、中絶手術は出来るだけ1回にとどめるのが賢明で、2度、3度と同じ過ちを繰り返すのは得策ではありません。

Q9:胎児の供養は必要でしょうか?

A:これは心の問題ですね・・・。手術後に病室の枕を濡らして帰る女性は少なくありません。ただし、こうしなければいけないということはありません。いわゆる「水子供養」は、戦後に始まった日本独特の風習で、宗教の本質とは無関係です。キリスト教原理主義では中絶そのものを固く禁止していますし、大乗仏教でも不殺生戒を説いているからです。

Q10:中絶手術から女性が学ぶべきことは何ですか?

健康全般にも言えることですが、「自分の身体は、自分で守る」ということです。男性に依存した不確実な避妊方法に頼る時代は終わりました。避妊法に対する正しい知識を身につけて、女性自身が自分の意思と努力で望まない妊娠を避けるようにしてください。

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