ミレーナ(IUS:子宮内システム)

ミレーナとは?

IUD(Intrauterine Device)は、子宮内避妊器具のことです。子宮の中に、IUDを挿入すると、受精卵の着床を邪魔して、妊娠を妨ぐことができます。従来のIUDは、ピルにくらべると、避妊成功率が少し劣っていましたが、99年の低用量ピルの認可に続いて、新しい銅付加IUD(IUCD)が日本でも認可されましたが、残念ながら2023年に日本では製造終了となりました。

IUS(Intrauterine System)は、子宮内システムといい、2007年に承認されました。IUDにレボノルゲストレルという低用量ピルのトリキュラーやアンジュ、ラべルフィーユに使われ、緊急避妊薬にも使われているレボノルゲストレルという第二世代*の黄体ホルモンが加わったものです。子宮内で、少しずつ黄体ホルモンが放出されて子宮内膜に作用し、高い避妊効果と生理痛の軽減や生理の出血量の減少が期待できます。IUSの製品名はミレーナと言います。

銅付加IUDやミレーナは、ピルに迫る避妊成功率が報告されています。ピルにするか、ミレーナ(IUS)にするか、女性が自分の意志で、確実に避妊できる方法を比較してみましょう。

ピル(避妊薬)に使用される黄体ホルモンの種類(第一世代~第四世代まで)

世代 黄体ホルモン 代表的な薬品名 その他の薬品名
第一世代 ノルエチステロン ヤーズ、ヤーズフレックス  
第二世代 レボノルゲストレル トリキュラー、アンジュ、ラべルフィーユ ノルレボ、ジェミーナ
第三世代 デソゲストレル マーベロン  
第四世代 ドロスピレノン ルナベル、フリウェル、オーソM  

写真でわかるミレーナ(IUS)

ミレーナ

ミレーナ

ミレーナの患者さん用説明キット

ミレーナの患者さん用説明キット

生理の終わり頃が、ミレーナを入れるのに適しています。
ミレーナの挿入は、産婦人科の外来で、麻酔なしで受けることができます。
膣を消毒後に、子宮の入り口から、医師がミレーナを挿入します。挿入時に、少し痛みがあり、出血する場合があります。挿入後は、ストリング(ミレーナについているひも)を適当な長さに切り、膣のなかにストリングを残し、超音波検査でミレーナの位置を確認したあと、帰宅できます。
所要時間は、5~10分です。
細菌感染を予防するため、数日間抗生物質を内服し、挿入当日のみ入浴を制限します。1週間後に、ミレーナの位置を確認し、挿入後初めての生理終了後に、もう一度ミレーナの位置を確認します。
以後は、定期的に診察を受け、ミレーナの位置の確認が必要です。
ミレーナ挿入後、途中でミレーナを止める場合は、産婦人科で、膣のなかのストリング(ミレーナについているひも)を引いて、ミレーナを抜きとります。
順調な場合でも、5年に一度は、ミレーナを新品に交換することが、望ましいとされています。

ミレーナの装着・交換は、55,000円(内税)

ノバT(製造中止)とミレーナの比較

名称 ノバT ミレーナ
別名 IUCD(銅付加IUD) IUS(子宮内ホルモン除放システム)
製薬会社 バイエル
承認・発売年 2004年 2007年
使用目的 避妊
対象となる女性 経産婦(分娩経験のある女性) 経産婦はもちろん初産婦にも
費用(内税) 38,000円 55,000円
健康保険の適応 なし 過多月経・月経困難症には、2014年から保険適応開始
自己負担は、1万円弱です。
装着時期 生理後2~3日頃 生理の終わり頃
装着後の生理 変わらないか、増える 減るか、生理が来なくなる
排卵 排卵する
交換の目安 5年間

メリットとデメリット

ノバTやミレーナは、ピルのように毎日忘れずに薬を飲まなければならない煩わしさから解放されます。ただし、感染に弱い・・・。クラミジアや淋菌などが感染すると、骨盤内で炎症を起こしたり、極端な場合は敗血症を起こした報告もあります。また、挿入時に子宮を穿孔(突き抜けて穴が開く)したり、途中で脱落して、避妊効果がなくなる ケースもあります。異常を感じた場合は、早めに担当医に連絡をお願いします。

写真でわかるミレーナ(IUS)

正常な膣内

正常な膣内
ピンク色の子宮膣部(しきゅうちつぶ)と表面の赤い所が子宮膣部びらんです。粘液は無色透明で、中央の横方向の割れ目が外子宮口(がいしきゅうこう)です。

IUD挿入後

IUD挿入後
外子宮口からストリング(IUDのひも)がでています。IUDを抜くときには、このストリングを引きます。ストリングは、とても軟らかいので、セックスの際にペニスを傷つけることはありません。

症例写真を提供していただいた患者さんに深く感謝します

ミレーナは5年間有効です

生理が終わってから、2~3日後がミレーナ(IUS)を入れるのに適しています。
ミレーナの挿入は、産婦人科の外来で、麻酔なしで受けることができます。
膣を消毒後に、子宮の入り口から、医師がミレーナDを挿入します。挿入時に、少し痛みがあり、出血する場合があります。挿入後は、ストリング(ミレーナについているひも)を適当な長さに切り、膣のなかにストリングを残し、超音波検査でミレーナの位置を確認したあと、帰宅できます。
所要時間は、5~10分です。
細菌感染を予防するため、数日間抗生物質を内服し、挿入当日のみ入浴を制限します。1週間後に、ミレーナの位置を確認し、挿入後初めての生理終了後に、もう一度ミレーナの位置を確認します。
以後は、およそ3ヶ月後、6ヶ月後、1年後、2年後に定期的に診察を受け、ミレーナの位置の確認が必要です。
ミレーナ挿入後、途中でミレーナを止める場合は、産婦人科で、膣のなかのストリング(ミレーナについているひも)を引いて、ミレーナを抜きとります。
順調な場合でも、2~3年に一度は、ミレーナを新品に交換することが、望ましいとされています。

ミレーナが向いている女性、向いていない女性

ミレーナは、分娩経験があり(経産婦)、セックス・パートナーが1人に限定された、子宮などに筋腫などのトラブルのない女性に向いています。逆に、分娩経験がなく(初産婦)、複数のセックス・パートナーがあり、子宮に筋腫などのトラブルのある女性には、あまり向いていません。

ただし、ミレーナは、子宮の入り口が狭い分娩経験のない女性にも、装着することが可能です。

また、挿入後は、ピルと同様に生理痛が改善したり、生理の出血が減る効果も期待できます。また、ミレーナに感染して、子宮内膜炎や骨盤内炎症をおこすことがあり、複数のセックス・パートナーがあり、性行為感染症のリスクの高い女性では、注意が必要です(ピルが子宮内膜炎や骨盤腹膜炎を減らす傾向があるのと逆になります)。筋腫などがあって、子宮が変形している場合も、ミレーナの位置がずれて外れてしまったり、ミレーナが子宮内で動いて不正出血を招くことがあります。ミレーナが正確に装着されずに、外れてしまった場合は、避妊効果はなくなります。ミレーナは、正しく装着されていることを定期的に確認する必要があり、ミレーナを使う女性は、産婦人科を定期的に受診することが大変に重要です。

ミレーナはピルに匹敵する避妊成功率を上げたことで、医学的にミレーナが再評価されるようになりました。

ただし、依然としてごくわずかですが、妊娠してしまう女性があります。

ピルが、毎日毎日欠かさず薬をのみ続けなければならないのとくらべ、ミレーナにはそうしたわずらわしさがありません。

ただし、ミレーナは、位置確認を医療機関で定期的に行う必要があり、中止する場合も医療機関を受診する必要があります。

不正出血で、子宮体部ガンが疑われる場合には、ミレーナを抜いて検査する必要があります。

ピルのように、自分で自由に中止したり、再開したりすることができません。

いずれにせよ、男性にたよらず、女性が自分の意思で避妊することが確実にできる方法がさらに増えたことは、女性にとって大変に喜ばしいことです。

以前は、未婚で、仕事が忙しい20代の女性にはピルが適しており、結婚して子供を生みおえた30~40代の専業主婦にはIUDが向いていると言われてきましたが、女性のライフスタイルは非常に多様化しており、ミレーナの登場で、一概に言えなくなってきています。

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