HPV定性テスト(PCR法)
性行為感染症の尖圭コンジロームはHPV(Human Papiloma
Virus)が原因で起こりますが、HPVはこの他に子宮頸がんの発生と密接に関係していることが最近になってわかってきました。
HPV定性テストとは、子宮の入口にHPVが感染しているかどうかを調べる検査です。
陽性の場合は、さらに感染しているHPVの型(種類)まで診断できるようになりました。
従来から子宮頸がんの診断には、子宮の入口の細胞をこすりとって顕微鏡で観察する細胞診が行われてきましたが、当院では次の患者さんには細胞診と同時にHPV定性テストをお勧めします。
- 尖圭コンジロームを発病した女性、または過去に発病したことのある女性
- 今の所無症状だが、セックス・パートナーが尖圭コンジロームを発病し、自分もHPVに感染した恐れのある女性
- 今まで子宮ガン(子宮頸がん)検診で、クラスⅢa以上と判定された女性
子宮ガン検診(細胞診)の判定は、次のように分類しています。
クラス | 判定 |
---|---|
Ⅰ | 正常 |
Ⅱ | 軽度の異型性を認めるが正常 |
Ⅲa | 異型性を認め悪性が疑われるが、おそらく正常 |
Ⅲb | 異型性を認め、悪性がかなり疑われる |
Ⅳ | ほぼ間違いなく悪性(がん) |
Ⅴ | 明らかに悪性(がん) |
※子宮頚部病変におけるHPVの関わりが明らかとなったため、アメリカではべセスダシステム(1988年)と呼ばれる新たな細胞診の報告様式が、2001年に大幅改定され、現在世界中で使用されています。08年日本産婦人科医会でもべセスダシステムを正式に採用することがきまり、今後は日母分類→べセスダシステムによる報告書に変わっていく予定です。
略語 | 原文 | 判定 | 当院の方針 |
---|---|---|---|
NILM | negative for intraepitherial lesion or malignancy | 陰性(上皮内病変ではない/悪性ではない) | 正常です(^^)。
日母分類のⅠ、またはⅡに相当します。 来年も婦人科検診を受けましょう♪ |
ASC-US
アスカス |
atypical squamous cell of undetermind significance | 意義不明な異型扁平上皮細胞 | 日母分類のⅡだけでなく、Ⅲaも含む。
当院では出来るだけHPVテスト・コルポ診のできる専門病院を紹介しています。 |
L-SIL | low-grade squamous intraepithelial lesion | 低悪性度扁平上皮内病変 | HPV感染性疾患であり、腫瘍化していない=自然治癒しやすい。
日母分類のⅢaに相当します。専門病院を紹介しています。 |
H-SIL | high-grade squamous intraepithelial lesion | 高悪性度扁平上皮内病変 | HPVが細胞核内に入り込んだ状態で腫瘍化が起きている=自然治癒しづらい。
日母分類のⅢa、Ⅲb またはⅣに相当します。専門病院を紹介しています。 |
ASC-H
アスカスハイ |
atypical squamous cell can not exclude H-SIL | H-SILを除外できない異型扁平上皮細胞 | 日母分類のⅢaまたはⅢb に相当します。
専門病院を紹介しています。 |
CA | invasive carcinoma | 浸潤癌 | 日母分類のⅤに相当します。
専門病院を紹介しています。 |
当院の子宮がん検診は、検査会社に依頼して専門の病理医が判定します。ただし、顕微鏡下の形態診断であるため、紹介先の専門病院で違う診断結果になることがあります。癌の早期発見と患者さんの選択肢を広げるという観点から、少しでも疑いがある場合は、早目に専門病院を紹介し、別の病院・別の医者で再確認を行うのが患者さんの利益になると考えています。よろしくご理解ください。